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ニュースリリース

食料安全保障に関する政策概要

2020年06月10日
世界には、78億という全人口の空腹を満たすのに十分すぎる食料があります。しかし現在、8億2,000万人以上が空腹を抱えています。また、5歳未満の発育阻害児も約1億4,400万人を数え、全世界の5歳未満児の5人に1人の割合を超えています。

私たちのフードシステムは破綻しつつあり、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の世界的大流行(パンデミック)は、状況をさらに悪化させています。すぐに対策を取らない限り、何億人もの子どもと大人に長期的影響を及ぼしかねない地球規模の食料緊急事態が迫っていることは、ますます明らかになりつつあります。

今年はCOVID-19の影響により、約4,900万人が新たに極度の貧困に陥るおそれがあります。急性の食料不安や栄養不安を抱える人々の数も、急速に拡大することになるでしょう。世界の国内総生産(GDP)が1ポイント下がるごとに、発育阻害の子どもは70万人ずつ増えていきます。

食料が豊富な国でさえ、フードサプライチェーンが混乱するリスクを抱えています。COVID-19対策による最悪の影響を避けるために、私たちは今すぐに行動を起こすことが必要です。私はきょう「食料安全保障と栄養に対するCOVID-19の影響に関する政策概要」を発表します。そこには3つの明確な分析結果が反映されています。

第1に、私たちは最も深刻なリスクを抱えた場所に関心を集中しながら、生命と暮らしを守るために結集しなければなりません。そのためには、食品栄養サービスを必須の活動に指定する一方で、食品業界の労働者を保護する適切な措置を実施する必要があります。また、脆弱な立場に置かれた人々に不可欠な人道的な食料、生計、栄養支援を維持しなければなりません。

さらに、食料危機を抱える国では、社会的保護制度を補強、拡充するための要素として、食料を位置づけなければなりません。各国は食品の加工や輸送、国内の食料市場への支援を拡大する必要があります。フードシステムの機能継続を確保するためには、貿易の経路を開けておかねばなりません。また、小規模食料生産者や農村事業者の流動性ニーズの充足を含め、包括的救済・刺激策が最も脆弱な立場に置かれた人々に届くようにもしなければなりません。

第2に、私たちは栄養に関する社会的保護制度を強化しなければなりません。
各国は、特に幼児、妊婦や授乳中の母親、高齢者その他のリスクにさらされた人々の安全かつ栄養豊富な食料へのアクセスを守る必要があります。また、栄養面でのリスクを抱えた集団に裨益するよう、社会的保護制度の適応と拡充を図ることも必要です。そこには、学校給食の機会を失ってしまった子どもに対する支援も含まれます。

第3に、私たちは将来に投資しなければなりません。
私たちには、より包摂的で持続可能な世界をつくる機会が訪れています。食料生産者と労働者のニーズによりよく取り組めるフードシステムを構築しようではありませんか。飢餓を根絶すべく、さらに多くの人々が健康的で栄養豊富な食料を手にできるようにしようではありませんか。

そして、フードシステムと自然環境の関係性を変容させ、自然や気候との相性を改善することにより、そのバランスを取り戻そうではありませんか。メタンの44%を含め温室効果ガス排出量全体の29%を占めるフードシステムは、生物多様性に悪影響を及ぼしています。私たちはそのことを忘れてはなりません。

きょう発表する政策概要に従い、これらの対策をさらに進めていけば、COVID-19のパンデミックが食料安全保障や栄養に及ぼす最悪の影響をいくつか回避すると同時に、私たちに必要な「グリーンへの移行」を支えていくことも可能になるのです。


(アントニオ・グテーレス 国連事務総長メッセージより)