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ニュースリリース

長崎平和祈念式典

2020年08月09日
本日、75 周年という重要な節目の年の長崎原爆犠牲者慰霊平和祈念式典におきまして、ご挨拶ができますことを光栄に思い感謝いたします。原子爆弾の犠牲となられた方々の御霊に、謹んで哀悼の誠を捧げます。

この街は、「再生」、「復興」、そして「和解」の真の実例です。長崎市民の皆様は、被爆でのみ定義されるのではなく、あのような大惨事が決してほかの街や人々に降りかからぬよう一身を捧げて来られました。国際社会は、核兵器のない世界を達成するための皆様の献身に常に感謝しています。

私は、何十年にもわたり健康上の、また社会的、経済的な苦難を耐え抜かれた、長崎の被爆者の方々に、心からの敬意を捧げます。原子爆弾の苦難に囚われるのではなく、その逆境を転じ、核兵器の危険に警鐘をならし、人間の精神の勝利を世に示して来られました。

長崎の例は、世界にとって完全な核兵器廃絶を実現するための日々の動機となるべきです。しかし悲しいことに、この街が原子爆弾によって焦土と化した日から75 年経った今、核の脅威は再び高まりつつあります。

故意に、あるいは偶発的に、もしくは誤算によって核兵器が利用されるリスクが危険なほど高くなっています。核兵器をさらに探知されにくく、より正確で、より速く、一段と危険なものにするために近代化が図られています。そして、核兵器保有国間の関係は、不信感、透明性の欠如、そして対話の不足により危うい状態にあります。冷戦終結後は見られなかったような好戦的なレトリックを使った、核による威嚇行為が行われています。

核兵器の危険性を低減し、その廃絶をもたらすための条約や協定の網の目がほぐれ、今までの核軍縮の成果が失われる危機に瀕しています。私たちは、この恐ろしい傾向を覆さなければなりません。

国際社会は、核戦争には勝者はなく、また決して行われてはならないという認識に立ち戻らなければなりません。徐々に進みつつある既存の核軍縮体制の崩壊に早急に歯止めをかける必要があります。核兵器を保有する全ての国には、率先してこれに取り組む義務があります。

私たちは、核軍縮のための共同の努力を再開すべく、第10 回核兵器不拡散条約運用検討会議を活用しなければなりません。私たちは、核実験に反対する規範を擁護しなければなりません。そして、国際的な核軍縮体制を保持し、強化しなければなりません。私は、新たにその重要な一部となる核兵器禁止条約の発効を心待ちにしております。

75年という長い歳月が過ぎたにもかかわらず、いまだに核の恐ろしさと被爆者の方々からの重要な教訓が学ばれていません。私はこの機会をお借りして、国際連合が、勇敢な被爆者お一人お一人のメッセージを受け継いでいくことを誓います。そうすることで、冷徹な核戦略の論理がもたらし得る人々の悲劇を世界が知ることになるでしょう。未来の世代が核の大惨事の陰影から脱け出すことに手を貸すためにも、この歴史を、明日の平和構築者である今日の若者へ継承していくことは、私たちの責務でなければなりません。

この日を機に改めて申し上げます。二度と広島の惨事を繰り返さないように。二度と長崎の惨事を繰り返さないようにと。


(アントニオ・グテーレス 国連事務総長メッセージより)