世界的に業務の効率化、自動化・省人化に向けたモノづくり基盤の構築・刷新が加速しており、日本でも熟練工の退職による技術継承や、労働力確保のハードルによる人手不足などの課題に対応するため、製造業のDX化の取り組みが広がっています。多種多様な目的を持つユーザーによる新規・更新・刷新・拡張需要が増加しており、特に、エンジニアリングチェーンのDX化、設計と製造のDX連携のニーズの広がりが市場拡大を牽引しています。

また、FA(ファクトリーオートメーション)向けでは自動車関連や電機・電子関連、PA(プロセスオートメーション)向けではオイル＆ガスや化学関連、医薬品関連を中心に需要は活発化しており、大規模企業から中小規模企業まで幅広いDX投資の拡大が市場成長を後押ししています。ネットワーク・セキュリティ領域ではデジタルファクトリー化の進展に伴い、無線化への投資意欲が高まっているほか、OTセキュリティ(製造装置や製造工程システムの制御・監視システムに関するセキュリティ)に対する意識も高まっており、関連するツールやサービスが大きく伸長しています。

日本では、人手不足や技術・ノウハウの継承、労働力確保など製造業が抱える喫緊の課題に対する解決策として、モノづくりに関わる各業務フローのDX化により変革・連携・最適化して、製造現場のDX基盤構築を目的に旺盛な投資が継続するとみられ、市場拡大が続くと予想されます。

領域別にみると、設計・製造・販売システム・ソリューションの規模が大きく、市場を牽引しています。特に、モノづくりのDX化を進める軸となるPLM/PDMや生産プロセスシミュレータ(組立製造ライン向け)が好調に推移しています。また、ローコードプラットフォーム(製造業向け)は米州や欧州を中心に、アジアでも採用する企業が増加しています。

生産現場システム・ハードウェアでは、3Dプリンターやハイブリッド複合加工機が伸びています。複合加工機は次世代の金型製造装置としての需要が高まっているほか、金属3Dプリンターでは難しい大型部品の造形ニーズの拡大により、大幅な伸びが予想されます。

PAシステム・ソリューションは、DCS(Distributed Control System)が7割以上を占めており、欧米や日本、中国などでは更新・拡張案件が中心です。インフラ関連の設備投資が活発なインド、オイル＆ガス向けの設備投資が回復している中東の需要が期待されます。LIMS(Laboratory Information Management System)はDX推進に加えて、既存顧客のリプレース案件や複数拠点のシステム統合などにより伸びています。医薬品メーカーの採用が中心であるも、石油化学・化学関連などでも需要が増えています。

ネットワーク・セキュリティは、製造業のDX化によるデータ伝送量の増大や、産業施設内の無線化ニーズの高まりなどにより、産業用セルラー基地局が大きく伸びています。また、ネットワーク化に伴うユーザーのセキュリティ意識の高まりから産業用ファイアウォールや不正侵入検知システム(OT-IDS)などの需要が増加しています。

サービス・ソリューションでは、オンデマンド部品調達サービスがDX化の進展で伸びています。また、図面管理・検索システムは、日本メーカーが積極的な展開を進めています。エリア別にみると、現状は米州と欧州が市場の中心であり、デジタルデータをベースとした設計と製造のDX連携、サプライチェーン全体の最適化、新たなネットワーク・セキュリティ運用が他エリアに先行して、幅広い業種で進められています。

日本はモノづくりのDX化が本格的に始動し、エンジニアリングチェーンのDX化、設計と製造のDX連携をメインテーマにした投資が、業種・ユーザー層を問わず好調です。中国は人件費の高騰などを背景に、業務の効率化や自動化・省人化ニーズが高く、市場ポテンシャルは大きいとみられます。その他エリアでは、中国からの生産拠点シフト先として注目されるインドや東南アジアでの需要増加が予想されます。近年は経済の低迷を受け、DX化への投資・需要はやや低調傾向ですが、今後の回復が期待されています。

遠藤総研は、本事業を含め、環境社会の構築、資源リサイクルの効率化、超高齢化社会への対応など、社会的課題の解決に貢献する関連事業に引き続き多面的に取組んで参ります。